私は学生時代にフリーライターになり、以後、ライターの仕事と編集の仕事をフリーランスで請け負うようになったが、2010年、飲み屋で知人と意気投合してノリで会社を立ち上げることになった。それが、クラウドブックス株式会社である。
当時、元年と言われていた電子書籍を中心に手がけていこうという意気込みが社名に表れているのだが、電子書籍が収益的に全く割に合わないという事実に加え、共同出資だった役員同士で意見が割れまくり、1カ月ほどで空中分解した。
最終的に、役員から株券を買い取り、代表取締役だった私の個人事務所として、クラウドブックスはリスタートすることになった。
全く準備をせずに法人化してしまったので、初期はフリーランスとは勝手が違う部分にとまどうことも多かった。お金に関しても例外ではなく、意外とかからなかった費用もあれば、ボディーブローのように効いた費用もあった。
小規模法人の立ち上げを視野に入れている人のために、今回はそのあたりをシェアしたい。
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決算費用は仕訳ができればローコストになる
私は経済学部出身で自分で会計の仕訳ができることもあり、フリーランス時代は自分で青色申告をしていた(フリーランスでも、税理士に20万〜30万円ほど払って確定申告を丸投げしている人はけっこういる)。
会社の仕訳も、基本は複式簿記で、青色申告と一緒である。ただ、決算関係の書類は難解で、仕訳からどんな決算書をつくればいいのか全く意味がわからなかった。
知人に税理士を紹介してもらうことも考えたが、弊社の仕訳は経費処理と月5回程度の入金のみなので、仕訳作業自体は、会計ソフトを使えば余裕だ。決算処理だけをローコストでやってくれる業者はないかと探していたら、渋谷区の森会計事務所が検索で引っかかった。
初年度からずっと森会計事務所に決算処理のみを担当してもらっているが、その費用はわずか6万円+税である(もちろん、仕訳数や売上規模によって変動あり)。データのチェックや修正処理も丁寧で、今後もお願いする予定だ。
税務署の管轄が変わると移転費用が増える
法人として事業を運営し出すと気にならない額だが、本店の移転費用は、当時けっこう痛かった記憶がある。
同じ税務署の管轄なら3万円で済むが、リスタート時に、港区から世田谷区(管轄外)に本店を移したため、10万円ほどの費用がかかった。冷静になると、ちょっとした旅行ができる額である。
管轄外への移転は、転出&転入税務署への届け出など手続きも想像したより煩雑で(結局、行政書士に代行してもらったので楽だったが)、費用はさておき、頻繁に本店を移転するのは控えようといまも思っている。
法人はネットバンクのほうが手数料が高い
個人だと、ネットバンクにすると振込手数料が無料になるなど基本コストは低くなる。しかし、法人は逆で、ネットバンクを利用すると振込手数料が高くなる。
便利で安くなると思い込んでいたので、三菱東京UFJ銀行で口座を開設したときに、同時にBizSTATIONというネットバンキングにも申し込んだ。
しかしこれが、ブラウザがIEしか利用できないことからも薄々感じていたのだが、小規模法人にとってはかなり微妙なサービスだった。
月額2000円+税の基本料金がかかるのはまだいい。ただ、他行に3万円を振り込む度に700円+税も手数料がかかるのは、さすがに納得しづらい(ATMは400円+税)。
UFJの知り合いに聞いたら、やはり苦情は多いそうだ(フォローすると、ネットバンキングのほうが法人手数料が高いのは他行も同様)。はあちゅう女史もBizSTATIONには苦言を呈している。
マニュアルも、ちょっとした白書くらいの厚さがある。
接待費に関しては法改正で互角に
私のいる出版業界は、やたらと接待費がかかる。フリーランスの場合は青天井で損金算入できるのだが、法人(中小企業)は600万円を上限に、90%の損金算入が可能とやや不利になった。
現在は法改正され、800万円を上限に、100%の損金算入が可能となったので、地味に助かっている(上限は以前でもオーバーすることはないが、10%削られないのが大きい)。
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以上、細かい話ばかりだが、どなたかの参考になれば。ちなみに、最初はとまどったものの、いまは法人化して正解だったと思っている。
一番のメリットは、会社に愛着が湧くというか、フリーランスとは意識が変わることかも。小商い的なスタンスは変えずに、これからしっかり育てていきたい。