ライターや編集の仕事をしていると、門外漢のテーマや、初めて知った人のインタビューなど、その時点で知識ゼロの分野の仕事が降ってくることは日常茶飯事だ。
そのテーマや人について何か書いたりまとめたりするのに、知識ゼロでは話にならない。その分野の専門家と会話ができる程度には、詳しくなる必要がある。一般のビジネスでも、そんなシーンは多いだろう。
しかし、ゆっくり調べている時間はないという場合、あなたならどうするだろうか。
Googleで検索すればいいと思うかもしれないが、ネット上の情報は誤りも多いため、知識のベースとするには非常にリスクが高い。例えば誰かにインタビューするとき、Wikipediaの情報を鵜呑みにしていたら、かなりの確率で痛い目に遭うはずだ。
Wikipediaを信用するリスク
架空の例だが、
「世間一般的には優しいイメージが強いですけど、小学生の時に、空手でチャンピオンになってますよね」
「いや、なってないです。そんなこと誰が言ってたんですか」
「ネットに書いてありました」
「はぁ?」
「……すみません」
みたいなことが起こり得る。実際、著名人が「Wikipediaの間違った情報をもとに質問してこられるとゲンナリする」的なことを言うのを、何度も耳にしてきた。
信頼性の高い雑誌記事だけを検索
では、どうすれば信頼性のある情報を効率良く収集できるのだろうか。出版業界で重宝されているのは、東京・八幡山にある雑誌の図書館「大宅壮一文庫」だ。下記がその概要である。
公益財団法人大宅壮一文庫は日本で初めての雑誌図書館です。評論家・大宅壮一(1900-1970)の雑誌コレクションを引き継いで、明治時代以降130年余りの雑誌を所蔵しています。
大宅壮一文庫では雑誌記事索引データベースを作成しており、主な所蔵雑誌の記事を検索することができます。また、雑誌原本の閲覧や複写もできます。
大宅壮一は「本は読むものではなく、引くものだよ」と言っています。評論活動のかたわら、執筆のために資料収集と整理に力を尽くした大宅壮一らしい言葉です。
引用:大宅壮一文庫
大宅壮一文庫の使い方
大宅壮一文庫の使い方は簡単で、入館したら、受付にある用紙に、調べたいキーワード(人名でも事件名でも商品名でも)を書いて、スタッフに渡す。大宅壮一文庫のすごいのは、上記にもあるように、人力で雑誌記事索引データベースを作成しているところだ。
例えば、「能年玲奈」と書いてスタッフに渡せば、能年氏の過去のインタビューや特集記事が、どの雑誌のどの号の何ページに載っているかを、リストで出力してもらえる(関係ないが、最近の洗脳報道が心配だ)。
雑誌の記事なので、信頼性も高い(いい加減なことを書くと訴訟になる)。その中から、良さそうなインタビューや特集を、複数の媒体(多角的に見る意味がある)で5〜6冊読み込めば、一瞬でそのキーワードに詳しくなれるはずである。
ただ、大宅壮一文庫は図書館だが無料で利用できるわけではない。
入館料300円を払うと、出力したリストから10冊まで閲覧でき(11冊以上閲覧したい場合は100円払って再入館する。昔は入館料も再入館料も500円だったからだいぶ安くなった)、コピーしたい場合には、モノクロ1枚52円、カラー1枚123円を払って、スタッフの人に代行してもらうことになる。
ひとつのことを調べるのに、コピーも含めると1000円弱かかると思っておいたほうがいいだろう。
無料にこだわるならGoogleニュース検索
大宅壮一文庫が遠い、もしくは無料がいいという方は、Googleニュース検索でキーワードを調べるという方法もある。
校閲などの人員がいないウェブ媒体も含まれるので信頼性は落ちるが、ニュース記事だけがヒットするので、普通にGoogle検索するよりは質の高い情報を収集できる。
例えば「さかなクン」を調べると、下記のように3000件以上もニュース記事がヒットする。
インプットを変えればアウトプットは勝手に変わる
手軽なGoogle検索だけに頼っていると、みんながそうしているので、発想や発信が多くの人とかぶりがちになる。
逆に言えば、通常のGoogle検索以外で情報収集していれば、発想や発信にバリューを出せる可能性が高くなるということだ。
そして、何かを調べる際には、信頼性を念頭に置くと、アウトプットの質が高まるし、無用なトラブルも避けられるだろう。
スポット情報
大宅壮一文庫
住所:東京都世田谷区八幡山3丁目10番20号
京王線「八幡山駅」より徒歩8分/地図
電話番号:03-3303-2000
開館時間:午前10時~午後6時
閲覧受付:午後5時15分まで
複写受付:午後5時30分まで
休館日:日曜・祝日・年末年始(年末年始休館日:12月28日~1月4日)
入館料:一般300円(税込)、学割100円(税込)