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最近、本の値付け(定価設定)に悩まされる機会が多いこともあり、ヒントがありそうな行動経済学の本を移動中に読んでいる。

苦痛や恋愛も行動経済学の守備範囲

行動経済学は、人は合理的な決断をするわけではないということを示す学問だ。有名なのは、松竹梅的な値段を付けると中間の竹が一番売れることだろうか。もしくは、吊り橋の上で出会うと、そのドキドキを錯覚して恋に落ちやすいという「吊り橋効果」のほうが有名かもしれない(つまり、その範囲はお金関係だけにとどまらない。苦痛や恋愛も含まれる)。

数多くの本が出ており、中でも、行動経済学の権威であるダン・アリエリー氏の対話型講義を書籍化した『お金と感情と意思決定の白熱教室』(早川書房)は、読みやすくておすすめだ。

タオルの再利用率を劇的に上げた方法

本の値付けとは関係ないが、第二回に収録されている、相互主義の話が面白かったので、ここにシェアしたい。(環境的な意味でも、コスト的な意味でも)タオルの再利用率を上げたいホテルの事例をもとに、社会貢献系のプロジェクトに対して、率直に問題点を指摘している。

君たちが何か人に頼みごとをする時のことを考えてみてほしい。例えば私に何かしてほしい時、どう頼む? 「ダン、あなたがこれをしてくれれば、お返しに私も何かします」と言うだろうか。

(中略)

ホテルに話を戻すと、単に社会貢献の要素だけを取り入れた札を掲げると、逆に、タオルを再利用する人は減ってしまう。なぜなら「環境保護に協力しろって? そんなことは自分で出来る、なぜホテルと一緒にやらなければならないんだ」と思うからだ。

(中略)

「当ホテルは環境保護のためにすでに寄付しました。あなたも協力いただけるなら、タオルを再利用してください」。これこそが相互主義の精神というものだろう。

私はもうやったから、あとはあなた次第だ、と。こうした札を掲げたところ、タオルの再利用率が劇的に上がったんだ。

(中略)

社会貢献を使った手法はよく目にするが、正しい相互主義の精神に基づいたものは見たことがない。「あなたがこれをやるなら、私もこれをやる」というパターンばかりだ。

引用:ダン・アリエリー『お金と感情と意思決定の白熱教室』(早川書房)

だいぶ前から、一部の社会貢献系のプロジェクトに違和感を覚えることがあった(自分が携わってきたものも含む)。その原因は、まさにこれだったのかもしれない。

近い将来、社会貢献系の書籍を制作するプロジェクトにおいて、クラウドファウンディングで支援を募ることがあるような気がしている。その際は、「支援が集まったら出版します(集まらなかったら出版しません)」的なやり方だけはやめようと思った次第である。

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