震災から4年、先日の3.11を迎えるにあたって、何冊か3.11関連書籍を購入した。そのうちの1冊がノンフィクション作家・眞並恭介氏の『牛と土』(集英社)だ。
「なんで殺さなきゃいけないんだ。うちの牛、何も悪いことしてないのに」
3.11で被災したのは人間だけではない。本書は福島で被曝した牛たちを追ったノンフィクションである。国から殺処分を指示されたが、一部の牛飼いたちは牛を生かすために奔走していた。
被曝しながら、餌等の費用も自己負担しながら、肉牛、乳牛としての商品価値をなくした牛たちの生きる意味を、一部の牛飼いたちは探し始める。彼らは行政とも攻防しながら、大きくふたつの意味を見出し、研究プロジェクトがスタートした。
(1)線量の低い避難地域の農地保全(牛が草を食べ尽くしてくれる)。
(2)土地の除染への活用(牛が草を食べることが除染になる。糞尿を特定エリアに廃棄できれば、放射性物質を移動させられる)。
しかし、これらの意味を国が認めているわけではなく、厳しい状況が続いている。飼料代等の一部は日本獣医師会等の寄付で賄われてきたが、底をつく日が近いという。この研究プロジェクトに参加している5軒の農家の牛280頭を飼育するのには、野生の草をなるべく食べさせても、年間数千万円のコストがかかるからだ。
冬場の餌代がもっとも費用がかかるため、牛に除染した分の労賃を払ってもらえないか役所と交渉中とのことだが、汚染が拡散する可能性もあるとして、NOを突きつけられている。
牛を生かそうとする牛飼いたちを追う一方で、殺処分に同意した農家や、殺処分に従事した獣医などの心理的トラウマ(PTSD等)にも触れられている。震災および原発が狂わせたものの膨大さを、改めて痛感させられた。
そして、映画監督・園子温氏の推薦文にあるように、この話は現在進行中である。
「福島の土も牛も、今もそこで生きている」──映画監督・園子温
分厚めの本ではあるが、気になる方はぜひ一読を。