スポンサーリンク

Pocket

まさか3度も同じ本でレビューを書くとは思わなかったが……行動経済学の権威であるダン・アリエリー氏の対話型講義を書籍化した『お金と感情と意思決定の白熱教室』(早川書房)で、もうひとつ紹介したいトピックがあるので、再々レビューを。

【関連記事】
一部の社会貢献活動に対する違和感の正体
駅で階段を使う人が66%増えた画期的な方法とは

全部入りのケーキミックスが売れなかった理由

行動経済学には、「卵理論」と呼ばれる法則がある。水を注ぐだけで焼けるケーキミックスがアメリカに入ってきた時、まったくといっていいほど売れなかった。理由は、手作りというには、手間がかからなすぎるからだ(カップラーメン的であり、ケーキのような誰かに振る舞うものには適していない)。

そこでメーカーは、粉から牛乳と卵を取り除いた。すると、手作り感が増し、売れるようになったことが、「卵理論」の名前の由来らしい。人は、何かに労力を注ぐと、それを高く自己評価する傾向があるということだ。本書では、その最たる例として自分の子供が挙げられている。

アイディアについても、この法則は当てはまる。人は、自分が思いついたアイディアには愛着を持つが、他人のアイディアには関心がなく、ときには憎しみすら持つことがある。

エジソンがテスラを憎んだ理由

ひとつ例を挙げよう。トーマス・エジソンとニコラ・テスラの話だ。エジソンは直流送電を発明し、テスラは交流送電を発明した。

テスラが交流送電を発明した場所はエジソンが作った研究所だったから、エジソンがアイディアの発明者になることも出来たんだが、エジソンは交流送電を憎んだ。テスラを追放し、広告会社を雇って交流送電を中傷することまでした。

交流送電が原因で事故が起きるたび、エジソンはあらゆる雑誌などにその記事が載るように手をまわした。自分以外の人が思いついたアイディアへの憎しみは、それほど強かったんだ。

エジソンといえば近代最高の秀才の一人だし、我々は彼から大きな恩恵を受けているが、彼のエゴと「自分開発主義」とでもいうものはあまりに強かったんだ。

私たちの学界では、こういうのを「歯ブラシ理論」と呼ぶ。つまり、誰もがひとつは欲しがるが、決して他人のものは欲しがらない。人はアイディアを欲しがるが、他人のアイディアは欲しくないんだ。

引用:ダン・アリエリー『お金と感情と意思決定の白熱教室』(早川書房)

企画提案はブラッシュアップの余地を残す

エジソン意外と人間小さい……。しかし、この「卵理論」および「自分開発主義」は、私も含めて、企画提案を商売とする人間は、避けて通ることができない法則だ。

実際、すばらしい企画を思いついたとしても、「絶対にこのままじゃないと認めない」的な態度で臨むと、通るものも通らなくなってしまう。

月並みだが、たたき台として企画を持って行き、一緒にブラッシュアップしていくと、自分の企画であると同時に相手の企画にもなるので、スムーズに話は進む。内容が良くなるケースも多いし、ある程度粗削りな段階で企画を打診するのが、自分の中で定番になりつつある。

行動経済学は、スマホの課金ゲームのように悪用もできるし、社会の問題解決にも活用できる(もちろん悪用は推奨しないが)。

学ぶことで自分が罠にハマるのを回避しやすくもなるので、何か1冊入門書を読んでおくといいのではないだろうか。本書はそれに最適である。

Pocket

スポンサーリンク