最近、小商いというワードを耳にすることが多くなった。小商いとは、ビジネスの規模の大きさのことではなくて、ざっくり言うと「必要以上に利潤を最大化しようとしなくても、自分と関係各所が楽しくやれる範囲でビジネスを展開していけばよくない?」というコンセプトを指す。
縮小しながらバランスする
なんで小商いという名称かというと、拡大路線で突き抜けたいまの経済にとっては、たいてい「縮小しながらバランスしていくこと」を指すからだ(例えば、代表とも言えるカリスマベーカリー「タルマーリー」※現在移転作業中は、週休3日を公言していた。ただ、最近の「タルマーリー」のfacebookページの投稿を見ると、心身が弱っていてパンが焼けないという記述が見られ、小商いとはなんだろうかという気分にもなった)。
教本とも言える平川克美『小商いのすすめ』(ミシマ社)には、規模の大きい小商い的な企業も紹介されている。しかし、現状、日本には小商い的な企業というのはあまりないので、実践するなら独立するか、働きながらできる範囲で週末起業的にチャレンジしてみることになる。
ここからが本題だが、フリーランスや小規模事業者、または週末起業などを実践するとき、本を売っていく際の考え方はすごく役立つような気がしている。本は価格が安い上に原則としてひとりに1冊しか売れないものなので、無料、もしくは格安でできるPR方法を考えざるを得ないからだ。この資本投入感ゼロの条件が、小商い的なのである。
フライヤーは小商い的に優秀
PRの一例を挙げると、ウチが携わった本では、予算が出版社から出ずに自腹になったとしても、フライヤーをつくることが多い。興味がある人に配ることで書名を忘れて買えないという事態を防げるし、なにより、デザイン費を考えなければA6サイズ5000枚を、たった7770円で刷れるからだ(表カラー、裏モノクロ)。この価格(1枚1.5円)なら、著者目線(印税のみ)で考えても余裕でペイする。
先日、ボクシング世界王者の内山高志選手をインタビューしたときに、若い頃は試合情報や自分の紹介を書いたチラシのようなものを持ち歩いていて、飲食店などで仲良くなった人に渡していたという話をうかがった。そこから試合に来てくれる人も大勢いたし、いまでも応援してくれている人が数多くいるという。
新人ボクサーはまさに小商い的な要素が強いと思うが(ファイトマネーはチケットで支払われることが多いし、スポンサーがつくつかないも人間性によるところが大きい。もちろん試合でも魅せなければならない)、後にチャンピオンになる人はやはり違うなと感じたエピソードだった。
その他、本のPRには、無料でメディアに掲載してもらう方法などさまざまなコツがある(パブリシティ)。人とのコミュニケーションが大事になってくるので小商いに応用できるものが多いし、本の企画の立て方を学ぶことは、小商いの企画を考えるのにも役立つだろう。
自由大学「出版道場」昼クラス受講生募集中
……というわけで(?)、現在、私が講師を担当する著者養成講座『出版道場』の、昼クラス受講生を募集中である。平日の昼というチャレンジングな時間帯だが、将来的に小商いを手がけたいという方も、ぜひチェックいただけたらと。