先日行われた「出版と図書館」分科会にて、新潮社・佐藤隆信社長が、新刊が売れない原因の一端は図書館にあると明言。スマートニュースのトップでも取り上げられるなど話題になった。
図書館の年間貸出数は新刊の年間販売数を上回る
出版不況・活字離れが叫ばれるなか、実は、日本の図書館数はこの10年で400館以上増えていて、現在は3200館を超えている。年間貸出数は7億冊を突破。2009年頃には新刊の年間販売数を逆転したと言われており、新古書店やAmazonマーケットプレイスの成長と合わせて、出版社には頭が痛い問題だ。
佐藤社長の発言を、下記に引用する。
佐藤社長は、ある人気作家の過去作品を例に、全国の図書館が発売から数カ月で貸し出した延べ冊数の数万部のうち、少しでも売れていれば増刷できていた計算になると説明。司会役の調布市立図書館(東京都)の小池信彦館長が「それは微妙な問題で……」と言葉を濁す場面もあった。
引用:朝日新聞デジタル
人気作家の作品は8カ月で延べ4万回以上貸し出される計算
今年2月に行われた、シンポジウム「公共図書館はほんとうに本の敵?」では、新潮社・石井昂常務も同じ事例について語っているが、こちらのほうがより具体的なので、下記に引用したい。
直木賞をとって今人気の女流作家の方の初版は2万5000部です。今、2万5000部の初版は大変な数字です。それが1か月でほぼ2万部売れて、そのあと、パタッと止まってしまう。
2か月目が約2000部ちょっと。そのあとは700台、4か月目からは返本が増えてマイナス(編注:注文を返品が上回った状態=出版社の倉庫在庫が増える状態を指す)になります。結局増刷はかからない。2、3年前では考えられなかった状況です。
行き着くのは図書館でベストリーダー上位の本が図書館で貸し出され、今、例に挙げた方の本は2700冊くらいが図書館に入っていて、もちろん推定ですが、フル回転すると8か月で4万2000部以上が読まれている。
なおかつ貸出し数の見込みは一館で800〜900が予約に入っている。増刷できるはずの本が増刷できないのは、やはり図書館の無料貸出しに問題があるのではないかと思っています。
引用:マガジン航
初版2万5000部の本が、無料で4万2000人に読まれたがために増刷できないというのは、確かに異常事態だろう(2700冊も図書館に購入してもらっているのを棚上げしすぎな気もするが)。
図書館購入で成立している渋い本などもあるので一概には言えないが、一部で提案されているように、小説や実用書の新刊は発行6カ月以内は貸し出せないようにするなど、対策が急務と思われる。